クラウドファンディングは、様々な企画やアイデアを実現するために資金を集める仕組みで、近年では多くの企業や個人が利用しています。
この記事ではクラウドファンディングの仕組みやプロジェクトが完了するまでの流れなど、以下の項目を解説していきます。
- クラウドファンディングにはリターンの有無など集金方法ごとの違いがある
- クラウドファンディングサイトでは掲載時の審査がある
- クラウドファンディングサイトごとに集金方法や手数料が異なる
クラウドファンディングの仕組みに興味がある人や実際に利用を検討している人は、参考にしてください。
クラウドファンディングには集金や決済方法に種類がある
クラウドファンディング(crowd funding)とは、起案者がやりたいプロジェクトを主にインターネットを介して提示し、賛同した人から資金を支援してもらう仕組みです。
日本では以前から自主企画への支援を行う動きはありましたが、クラウドファンディングの名称は2011年の東日本大震災に対する支援など、直近で使われるようになりました。
クラウドファンディングには、大きく分けて以下の4種類の集金方法があります。
集金方法 | 内容 |
---|---|
寄付型 | 支援金を全額寄付にあてるための方法 一般的な寄付と同じく支援に対するリターンはない |
購入型 | 物やサービス、プロジェクトに関係する権利などを購入する形で支援金を出す方法 具体的には開発完了した商品やクラウドファンディング限定の記念品、映像のクレジット表記に載る権利など |
(株式)投資型 | 支援したプロジェクトで利益が生じた際に、現金や株式などを配当として提供する方法 |
融資型(貸付型) | 支援者が発案者に対して融資する形で資金を出して、元本と利息を受け取れる方法 サイトによっては投資型の1種として提供される場合もある |
全ての集金方法で支援に対するリターンがあるわけではなく、リターンがある集金方法でも受け取れるものが変わってきます。
決済方法についてはクラウドファンディングのサイトによって、以下の2種類の方式が採用される場合があります。
決済方法 | 内容 |
---|---|
All or Nothing方式 | 目標金額を達成できた場合に資金を受け取れる方式 達成できなかった場合は、資金は全額支援者に返金される |
All in方式 | 目標金額の達成に関係なく、募集期間終了時に資金を受け取れる方式 起案者は開始時にプロジェクトを必ず実行する契約を結ぶ |
そのため、集金と決済方法の組み合わせによっては、同じクラウドファンディングという呼び方でも全く異なる内容になります。
クラウドファンディングの投稿は掲載サイトで審査に通る必要がある
クラウドファンディングの開始から募集期間終了までの流れは、以下の通りです。
- プロジェクトの目標設定
- クラウドファンディングサイトの決定
- プロジェクトの登録・投稿
- クラウドファンディングサイトの審査
- プロジェクトの開始・宣伝
- 募集期間終了後の支援者に対するお礼
上記の流れについて、起案者視点で各項目を見ると、以下のような内容になります。
プロジェクトの目標設定 | 達成したい目標の具体的な内容と必要な金額を計算し、目標金額を設定する 実際に支援を募った場合、目標金額を大幅に超える金額が集まる可能性もあるが、基本的には最低限必要な金額を想定しておく |
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クラウドファンディングサイトの決定 | クラウドファンディングのプラットフォームを提供しているサイトを選ぶ サイトによって対応する集金方法やサポートの有無が異なるため、目的に合ったサイトを探す必要がある |
プロジェクトの登録・投稿 | 利用するサイトを決定した後は、サイト内にプロジェクトの情報を登録する 文章と共に写真やイラストなども投稿できるため、プロジェクトに対して共感されるような投稿にできるよう準備を進める |
クラウドファンディングサイトの審査 | サイト側の基準に沿った募集内容であるか審査が行われる サイトによっては審査に通過した後、登録した画像の変更など投稿の改善点をアドバイスしてもらえる |
プロジェクトの開始・宣伝 | サイト内にプロジェクトが投稿されても直接閲覧する人は少ないため、各種SNSや動画投稿など宣伝を行う プロジェクトが拡散されるほど支援者が増える可能性があるため、積極的な宣伝活動が必要になる 目標金額の達成状況や支援者数を提示すると、プロジェクトの進行が可視化されて、支援者の連帯感を生じさせられる |
募集期間終了後の支援者に対するお礼 | 募集期間狩猟時には、目標達成の可否にかかわらず、支援者に対してお礼のメッセージをSNSやメールなどで伝える リターンを設定している場合は、物の配布や具体的な情報の提示を速やかに行う |
近年はクラウドファンディングサイトの種類も増えてきており、プロジェクトに関するサポートやアドバイスを行ってくれるところもあります。
しかし、プロジェクトに対する熱意や達成後の展望などは起案者自身が示す必要があるため、サイト内に投稿する際の工夫や宣伝活動は積極的に行っていきましょう。
一方、支援者視点では宣伝活動からプロジェクトを知り、サイト内で示された具体的な内容や各種SNSでの経過報告を閲覧しながら支援の可否を決めます。
プロジェクトに共感した場合は、実際に支援金を出しますが、支援する前に以下の内容を確認しておくと良いでしょう。
- 支援後のリターンの有無や内容の確認
- いくらから支援金を受け付けているか
- クラウドファンディングサイト内の支援金の送付手段
特に決済方法がAll in方式の場合は、目標金額を達成していなくてもプロジェクトが実行されるため、資金不足でプロジェクトが失敗に終わる可能性があります。
支援金が返金されない可能性もわかった上で支援するなど、集金や決済方法をよく確認してから支援するか判断しましょう。
クラウドファンディングには集金方法ごとに利点がある
クラウドファンディングは支援者さえ集まれば、様々な企画やアイデアを実現できる仕組みですが、全くデメリットがない集金方法とはいえません。
クラウドファンディングの集金におけるメリットとデメリットは、以下の通りです。
集金方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
寄付型 | リターンを用意する必要がないため、集金前後の手続きや作業を短縮できる | リターンがない分、他の集金方法よりも支援金が集まらない可能性がある |
購入型 | 支援金を出す段階で目に見えたリターンがあるため、支援者が集まる可能性が高い | 集金前後でリターンになる商品やサービスを準備する必要がある |
(株式) 投資型 | 購入型よりも多くの金額が集まる可能性がある | 支援者にとっては必ず成功するプロジェクトではないため、支援するか否かの判断が難しい |
融資型 (貸付型) | 購入型よりも多くの金額が集まる可能性がある | 起案者は目標達成後も元本と利息の支払いがあるため、長期的なプロジェクトになる 支援者にとっては必ず成功するプロジェクトではないため、支援するか否かの判断が難しい |
投資型と融資型は他の集金方法よりも大きなプロジェクトで採用されて、支援者は投資家が対象となる場合が多いため、支援金も高額になる可能性が高くなります。
しかし、支援者視点で考えると、プロジェクトが上手くいかなければ配当や利子が減少してしまう可能性があります。
クラウドファンディングの決済方法におけるメリットとデメリットは、以下の通りです。
決済方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
All or Nothing方式 | 資金不足でプロジェクトを始めないで済む | 支援者にとっては必ず実行されるプロジェクトではないため、支援しづらい可能性がある |
All in方式 | プロジェクトを実行する前提で募集するため、クラウドファンディングを開始した時点で次の準備を進められる | 場合によっては非常に少ない資金でプロジェクトを進める必要がある |
どちらの方法も起案者に利点はありますが、支援者としてはAll or Nothing方式の方が支援した後に損する可能性が少なくなります。
クラウドファンディングとは別にある程度運用できる資金がある場合はAll in方式、支援金が多数必要な場合はAll or Nothing方式を選ぶのがおすすめです。
起案者は資金調達しつつプロジェクトに対する反応を把握できる
起案者がクラウドファンディングを利用するメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・やりたい企画やアイデアに必要な資金をゼロから調達できる ・プロジェクトに対する世間の反応を事前に把握できる ・クラウドファンディングによって、プロジェクトを周知させられる | ・必ずしも目標金額が集まるわけではない ・集金やプロジェクトを失敗した場合、社会的信用を失う可能性がある ・目標達成前に企画やアイデアを盗用される可能性がある |
クラウドファンディングは資金調達する目的で利用しますが、同時に起案者が出した企画やアイデアに対する世間の反応を見られる点は利点です。
商品開発においてはアイデアを出した後に想定するターゲットの反応を見て、プロジェクト実行前に改善点がわかる可能性があります。
クラウドファンディングを行うとメディアに取り上げられる可能性もあるため、開始するだけで宣伝効果が期待できます。
一方で、必ず目標金額が集まるわけではなく、実際に資金が集まってもプロジェクトが成功するかは起案者の努力や力量次第です。
資金調達後にプロジェクトが失敗する可能性はゼロではありませんが、その場合は次回以降の支援を受けるのは難しくなります。
サイト上に掲載する難点として、企画やアイデアを盗用される可能性があり、資金力や宣伝力によっては先に商品開発や展開を行われてしまいます。
反対に既存の商品や作品と類似点が多くなると、盗用疑惑をかけられるため、掲載前の段階で類似商品との差別化は意識しなければいけません。
支援者は他ではできない体験や好きなサービスを継続できる
支援者がクラウドファンディングを利用するメリットとデメリットは、以下の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・見たいと思った作品や継続して欲しいサービスを実現できる可能性がある ・発売前の商品の入手や映像のクレジット表記など、他ではできない体験を楽しめる ・起案者とコミュニケーションが取れる | ・支援してもプロジェクトが失敗する可能性がある ・リターンが想定した物と違ったり、少なくなったりする可能性がある |
よく利用するお店の営業継続や新作映像の製作費などは、成功した後に支援者が利用や閲覧ができるため、プロジェクトの成功自体が支援者の喜びや楽しみになります。
好きなアーティストや製作者を支援する場合は、経過報告やプロジェクト終了時のメール等で少しやり取りできる可能性もあるため、ファンとして貴重な機会です。
一方で、支援に対するリターンがプロジェクト完了後に提供される場合、支援者の想定と異なる完成品になる可能性があります。
具体的な例を示していても完成品の状態を確約できるわけではないため、支援者はプロジェクトの内容を照らし合わせて支援先を決めましょう。
クラウドファンディングサイトは集金方法や手数料を確認する
クラウドファンディングの利用者が増加するにつれて、クラウドファンディングのサイトの数も増えており、サービスの選択肢が広がっています。
そんなクラウドファンディングのサイトを起案者として選ぶ際に重視したい点は、以下の通りです。
- 掲載可能なプロジェクトのジャンル
- 集金方法
- 手数料
集金方法は購入型と寄付型は同じサイト内で取り扱うところもありますが、投資型や融資型は少し仕組みが異なるため、個別サイトでのみ対応しています。
手数料の設定もサイトによって異なってくるため、手数料の利率とサービスの質を照らし合わせながら選びましょう。
次の項目からクラウドファンディングの代表的なサイトについて、集金方法や特徴などを紹介します。
CAMP FIREは通常のサービスと目的別のサービスが選択できる
CAMP FIRE(キャンプファイヤー)は、2011年1月に株式会社CAMPFIREが創業したクラウドファンディングサイトです。
掲載可能なプロジェクト | オールジャンル |
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集金方法 | 購入型寄付型(CAMPFIREとGoodMorning) |
決済方法 | All or Nothing方式All in方式 |
手数料(税込) | 公開料:無料その他の手数料はコンテンツごとに以下の通り CAMPFIRE:掲載手数料12%/決済手数料5% CAMPFIREコミュニティ:掲載手数料15%/決済手数料0% GoodMorning:掲載手数料4%/決済手数料5% BOOSTER:掲載手数料12%または15%(プランによる)/決済手数料5% machi-ya:掲載手数料20%/決済手数料5% キャンセル手数料:固定費3万円と支援数・支援の支払手段による従量費 |
購入型のクラウドファンディングとして、通常のCAMPFIREに加えて以下の4種類のサービスを選べます。
種類 | 内容 |
---|---|
CAMPFIREコミュニティ | オンラインやファンクラブのプラットフォームとして利用できるサービス大きく分けると以下の4種類がある ・ファンクラブ型 ・サロン型 ・レッスン型 ・定期便型 |
GoodMorning | 社会問題の解決に向けたクラウドファンディング向けのサービス寄付型に対応 |
BOOSTER | 株式会社パルコと共同運営する小さいチーム向けのサービス |
machi-ya | mediagene(メディアジーン)が運営するメディアにおける記事やSNSにも掲載できるサポートが付いたサービス |
サービスのうち通常のCAMPFIREとGoodMorningについては、寄付型にも対応しています。
クラウドファンディングサイトの中でも長年続いており、利用者も多いサイトです。
Makuakeはサイバーエージェント関連のメディアに掲載できる
Makuake(マクアケ)は、2013年8月7日に株式会社サイバーエージェントが新規事業として始めたクラウドファンディングサイトです。
掲載可能なプロジェクト | オールジャンル |
---|---|
集金方法 | 購入型 |
決済方法 | All or Nothing方式 All in方式 |
手数料(税込) | 掲載料:無料 決済手数料などを含めた全体手数料:20% |
設立当初は株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディングという社名でしたが、2019年に現在の名前に変更されました。
社名変更後はクラウドファンディングという名称を使わず、「アタラシイものや体験の応援購入サービス」として様々なサービスを提供しています。
集金方法は購入型のみですが、サイバーエージェント関係のAbemaTVや週刊アスキーなどのメディア掲載のサポートがあり、プロジェクトを周知させる体制が整っています。
READYFORは通常プランとフルサポートが付くプランの2種類がある
READYFOR(レディーフォー)は、2011年3月にREADYFOR株式会社が運営開始したクラウドファンディングサイトです。
掲載可能なプロジェクト | オールジャンル |
---|---|
集金方法 | 購入型 |
決済方法 | All or Nothing方式 All in方式 |
手数料(税込) | 掲載料:無料 その他の手数料は利用するプランによって以下の通り シンプルプラン:12%(運営手数料7%+決済手数料5%) フルサポートプラン:17%(運営手数料12%+決済手数料5%) |
起案者として利用する場合は、以下の2種類のプランから選びます。
プラン | 内容 |
---|---|
シンプルプラン | プラットフォームの基本機能とメールサポートが揃ったプランその他にも以下の内容が利用できる ・成功のノウハウを集めた「READYFOR サプリ」の提供 ・広報活動のフォローメール ・プロジェクト分析ツール |
フルサポートプラン | クラウドファンディングのプロのキュレーターが専任担当者として終了までサポートするプラン シンプルプランの内容に加えて、以下の内容をキュレーターが行う ・全体スケジュール管理 ・掲載ページ作成のアドバイス及びフォロー ・リターン設計のアドバイス |
フルサポートプランは手数料が少し高くなるものの、準備段階からサポートしてくれるため、初めてクラウドファンディングを利用する人におすすめです。
FUNDINNOは投資型で資金調達や広報活動をフルサポートしてくれる
FUNDINNO(ファンディーノ)は、2017年4月に株式会社FUNDINNOがサービス開始したクラウドファンディングサイトです。
掲載可能なプロジェクト | オールジャンル |
---|---|
集金方法 | (株式)投資型 |
決済方法 | – |
手数料(税込) | 審査料:10万円と実費 成約手数料:初回募集時は成約金額22%/2回目以降は成約金額16.5% プロジェクト成立後のシステム及びサポート機能利用料:毎月5万5千円 |
集金方法は投資型で、全体的に手数料がかかる代わりに、サイト側が指定した外部会計事務所や公認会計士などが資金調達をフルサポートしてくれます。
広報活動についてもインタビューや動画、WEBページの作成を支援しているため、起案者の負担が少ないサービスになっています。
Bankersは金融関係の経験者が在籍して貸付型の処理に対応してくれる
Bankers(バンカーズ)は、2020年12月に株式会社バンカーズ・ホールディングが開始したクラウドファンディングサイトです
掲載可能なプロジェクト | オールジャンル |
---|---|
集金方法 | 貸付型 |
決済方法 | – |
手数料(税込) | 会員登録および出資専用口座の開設・維持の費用:無料 ファンド出資の費用:出資金の振込手数料 その他:営業報酬、回収等にかかる費用、源泉税 |
借手となる企業と支援者となる投資家を繋げて、元本と利息の分配処理をスムーズに行います。
会社内には金融関係の経験者が在籍しており、経験者のアドバイスやサポートを受けられます。
クラウドファンディングは支援者を考慮しつつ自分に合う方法を選ぶ
クラウドファンディングは集金や決済方法に種類があり、リターンの有無や募集期間終了時のプロジェクト実施の可否などで違いがあります。
集金や決済方法の選択は支援者にも影響するため、起案者はプロジェクトに対して支援が集まるように考えつつ、実行に移せる方法を選ぶのがおすすめです。
クラウドファンディングサイトによって集金方法やサポート体制は異なっているため、複数のサイトを比較しながら選んでみましょう。
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